座右の銘
みなさんは座右の銘とかありますか?
私は、良いなと思う言葉や四字熟語はあっても、これがナンバーワンだ! と言えるほどものはなく、その時々で響く言葉が変わってきたように思います。
中学生の時に、文化祭で校舎を開放するから、廊下に書道作品を貼り出しますと言うことがありました。好きな言葉を書きましょう、四字熟語とか、紙におさまれば何でもいいから、と言うことで。
私は悩んだ挙句、「文武両道」と書きました。
中学時代の部活は剣道部で、なかなか頑張っていたと思います。
勉強の成績も、中学のころまでは良かったのです。この言葉を書くと決めて先生に報告すると「ピッタリだね^^」と言ってもらえ、嬉しかったのを覚えています。
今の私は何を頑張っているのだろう
座右の銘って、自分の目標とか、こうありたいっていう言葉を選びますよね。
中学のころは勉強も部活も頑張りたかったし、すでに頑張っているという意識もありました。
では今の私は、いったい何を心に掲げて生きていけば良いのでしょうか。
学生生活を終えて10年が過ぎ、取り組んでいるものが無くなった専業主婦の私が、大切にしていきたい言葉。
もう長いこと、座右の銘なんて言うものの存在を、考えてもいませんでした。
偶然の出会い
私は作家の道尾秀介さんが好きだという話を以前書きましたが、『いけない』という小説をご存じですか?
結構評判が良かったので、本屋さんで見かけられた方も多いかと思います。
あのお話の舞台となっている街はもともと、人気作家さんのミステリーアンソロジーのために道尾さんが作った設定なんです。
アンソロジーとは、いろんな作家さんの短編小説が一冊にまとめられたものです。共通のテーマで書かれたものがまとめられているのが多く、中には同じ人物が登場したり先に書かれた作品の続きになっている、リレー形式で書かれた連作アンソロジーもあります。
『いけない』の舞台となっている蝦蟇倉(がまくら)市と言うのは、アンソロジーの企画のために道尾さんが設定し、1話目を書いて、他の作家さんにパスするというかたちで生まれたものなんです。
説明が長くなってしまいました。
このアンソロジーの2冊目『街角で謎が待っている がまくら市事件』に収録されている桜坂洋さんの『毒入りローストビーフ事件』と言うお話に、その言葉はあったのです。
毒入りローストビーフ事件(ネタバレ無し)
三十を目前に控えた大学時代の同級生4人が集まり、レストランでワインとローストビーフを楽しんでいるシーンで、今は小説家となったひとりの男性がこんなセリフを言います。
「アイ・ガット・イット! という言葉がある。すべての体験は文章を書く上での重要な肥料となるという意味だ。最初にぼくについた編集者が教えてくれた。親が死んでもアイ・ガット・イット! バナナの皮で転んでもアイ・ガット・イット! ……らしいよ」
そう思って生きていこう
物語自体は生臭い殺人事件ですが、この言葉にはグッときました。
私はその経験を得た。
経験していない人にしか分からない感覚、感情、伝えられないことがあると、私は思っています。
病気になったことを、今まで私は損をしていると感じていましたが、タダじゃ起き上がらないぞ! というきもちが、この言葉を読んで芽生えました。
病気で苦しんだことが、ただの苦しみで終わるなんて損ですよね。
これまでの経験がどんなふうに活かされていくのかはまだ分かりませんが、病気を経験していない人よりも、自分は確かなものをもっているんだ! そう思って、私のこれまでの辛さを大切にしてあげたいと思います。
病気になっても、『 I got it ! 』
これが今の私の座右の銘です。
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