エッセイ
ジェーン・スーさんのエッセイを読みました。
『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』という、ちょっと前の本です。
スーさんはラジオを聴くようになって知り、ブックオフで見つけたので買ってみました。
印象的だったお話がありまして、ひとつ紹介したいです。
嫁が~でびっくりした!
スーさんがお茶をしていたら近くの席に姑3人組が来て、こんなお話をしていたそうです。
「息子が出張から帰ってきても、冷蔵庫になにも入っていないんですって! びっくりしちゃった!」と。
ここでスーさんが言うのは、びっくりという言葉の言外の意味について。
例えば、思いもよらない場所で知り合いに会ったからびっくりした、と言えば、これは単なる驚きの表現です。
しかし前者(姑)の言う「びっくり」には、言外から批判の気持ちが溢れていますよね。
「夫(私の可愛い息子)のための食事を用意しておかない嫁なんて!」という批判。
こういった「びっくりした」「驚いた」の使用方法を、スーさんは「びっくりの脱法使用」と名付けていました。
ちゃんと言えばいいのに
エッセイの中でスーさんは、「~~を不満に思う」とかはっきり言えば、「それは嫌だね」と言ったまっすぐな共感が帰って来て、その共感によって自分の不満が癒されるのにと言ったようなことを書いています。
「お嫁さんだって働いているんでしょ? あなたの息子だって大人なんだから自分で食べるものくらいなんとかできるじゃない」とたしなめられるかも知れないし、「まぁいくつになっても息子の健康は心配よね」といった言葉をもらって、いくらか溜飲が下がるかも知れない。
「びっくりしたわ」「それは驚いちゃうわね」なんて言い合うより、よっぽど有機的なやり取りが出来る。
私もこの意見に同意です。
この姑たちは、自分たちが小言を言う心の狭い姑ではないように振る舞うため、びっくりの脱法使用をしているんですね。
はっきり言わないマナー
ですがスーさん自身、周囲の人から「あなたはものをはっきり言い過ぎる」というお叱りを受けたこともあるそうです。
マイナスな感情をそのまま相手にぶつけるのは不躾、マナー違反という考えは確かにありますよね。
横澤夏子さんのネタで、「悪口言う人ってホントやだよね~。○○さんとか、チョ~悪口言うじゃん? ねぇ~、ホントやだ!」と言った感じのを見たことがあります。
あなたのそれは? って感じで、面白いですよね。
ちょっと話がそれました…。
私は、陰で悪く言うのが全て薄っぺらい悪口だとは思いません。
許せないものを見たら怒りを感じるし、そういった言動をした人のことを誰かに聞いて欲しくなる。「それはおかしいね」と共感してもらえたら、癒されるし安心します。
同じ獲物を悪く思う安心ではなく、自分の信じる感覚と同じものを持っている人が居ることの安心です。
でも、明確な非難や傷付いた気持ちをあらわにすることは、それを良しとしない人にとってはとても野蛮なことらしいです。
スーさんも、この塩梅が難しいと書いています。
そうか……。
でもまぁ、「びっくり」って表現すれば悪口じゃないでしょと思っているなら、それは違うと思うんですけどね。
本当に嫌なことがあったなら、「びっくりちゃった」ではなく、「こんな嫌なことがあった」と伝えてくれる人の方が、私は話をしたいです。