旅行エッセイ
益田ミリさんの『47都道府県 女ひとりで行ってみよう』を読了。
益田ミリさんはイラストレーターで、エッセイや漫画なども書いている方です。
以前に『美しいものを見に行くツアーひとり参加』というエッセイを読んで面白かったので、今回の本も読んでみようと思いました。
『美しいものを〜』の方は世界旅行で、すべてツアーなのですが、今回のはタイトルの通り日本国内での旅行で、ミリさんのオリジナルプランです。
私は飛行機が怖くて海外にも沖縄にも行ったことがないのですが、行ったことのない場所に旅行してみたいという気持ちはとても強いです。
学生の頃まではあまり旅行に興味がなく、わざわざ遠くにお金払って行かなくても…と思っていました。
誰と行くかが大事だと思っていて、それなら遠くに行かなくても、例えば大学時代なら家で飲み明かしたりすれば十分に楽しかった。
温泉とかに行くのなら、遠くの温泉宿に行かなくても、日帰りで行ける温泉が近くのあるのだし…と思っていました。
その後病気になり、旅行なんてとてもじゃないけどつらくて出来なかったのですが、回復して来るにつれて、旅行というものの素晴らしさを感じるようになりました。
なんというか、人生って1度きりで、健康に旅ができるのも期限があるのだよなということを、じんわりと感じるようになったんですよね。
旅のお供はいつも主人です。
イライラすることもあるけれど、頼りになるし、手続きや運転はすべてやってくれるし、私の体調も分かってくれているし、気を使わなくて良い1番のパートナーです。
そんな主人と一緒に、いろんな場所に行って、いろんなものを見たいと、年々強く感じるようになりました。
実際はそう何回も旅行に行っていられないので、世界の絶景の写真集だとか、今回のようなエッセイを読むことで、この気持ちを満たすようになりました。
エッセイの感想
前置きが長くなりました。
本を読んだ感想を、少し書きたいと思います。
まずこの本は、無理をしていないところが良いです。
はじめの頃は、「名物を食べないと!」とか、「現地の人と交流をした方が!」と考えていたというミリさん。
でもそれは自分に向いていないと気づき、デパートのお惣菜を買ってホテルの部屋で夕食をとるようになります。
他人と無理に交流するのも好きではなく、自分のペースで旅を楽しみます。
「コレがこの観光地のベストプラン!」みたいなエッセイではなく、もっとこうすれば良かったとか、大したことなかったとか、ちょっと嫌な経験をしたといったことも正直に書かれています。
ミリさんの考え方は、「私も同じ!」と思うものと、「これは全然共感できないなぁ」と思うものと、どちらもありました。
でも意見が同じでも違っても、そのトピックについて気にしたり考えたりするということ自体が、同じ感性でものを感じるということなのだと思います。
人間性の合わない人と会話をしていると、自分にとってはすごくこだわる話なのに、「ふーん」「へー、そうなんだー」と流されてしまうことあるじゃないですか。
意見は違うこともあるけれど、同じ話題について語り合える人と言うのが、一緒に居て本当に面白い相手ですよね。
何でも「あー分かるぅ」って会話をするのが女子トークでしょ、みたいに馬鹿にされることってあると思うのだけれど、私はそういう返事ばかりする人ってあんまり魅力を感じません。
何でも「分かるぅ」でもなく、「全然気にしたことないし」でもなく。
全く意見が合わないようでは辛いけれど、あなたはそうなんだね、面白いねと認められる範囲の個性で。
ミリさんは、嬉しいことやモヤモヤを感じるポイントや、こだわってしまう出来事が私と似ているかなと勝手ながら思い、そういった愉しさを感じる本でした。
漢方薬のような?
益田ミリさんの作品を初めて読んだのは、エッセイではなく漫画でした。
タイトルを忘れてしまいましたが、『週刊文春』に掲載されている漫画です。
数年前なのですが、今も連載は続いているのでしょうか。
それを読んだときの正直な感想は、「毒にも薬にもならない」でした。(すみません)。
電子雑誌読み放題のサブスクを始めたことで文春が読めるようになり、週刊誌には興味がなかったのですが、いろんな著名人のエッセイが豊富なので読み始めたのです。
今でもサブスクは契約していていくつかの雑誌を読んでいますが、文春は読むのをやめました。
理由は、エッセイを書いている著名人の中の数人を、嫌だな〜と思い始めてしまったからです。
自慢が透けて見えたり、贔屓にしている関係の人の悪事には優しく、媚を売る必要のない人がやった大して悪くないことには鬼の首を取ったように辛口で。
コロナ禍も重なり、そういったときの過ごし方や考え方に嫌悪感を感じた人も居ます。
そんな感じで読むのをやめた文春ですが、ミリさんの漫画はまったりほっこり。
ただ、ちょっとしたホロリを感じることはありましたが、強く揺さぶられるようなことはありませんでした。
そして、文春を読まなくなってからは、ミリさんのことは忘れていました。
しかし偶然『美しいものを〜』のエッセイを読み、この人良いじゃない!と感じて、その後数冊のエッセイとコミックを読み、今に至ります。
文春でちょっとだけ読んだ漫画にはあまりグッと来なかったけれど、その後読んだ『すーちゃん』シリーズなどはとても良かったです。
さきほど毒にも薬にもならないと書きましたが、確かに西洋医学のような強いお薬ではないかも知れません。
でも読み終わってこうやって考えたり、じんわりと漢方薬くらいの効き目なのかなと思いました。
それと、今回読んだ『47都道府県〜』の書かれた期間は、2000年代の中ごろ、ミリさんが30代半ばのころです。
今の私とちょうど同年代です。
ミリさんは立派に仕事をしていている独身だし、私とは全く違う環境を生きているのだけれど。
同年代の女性ということで、やっぱりそういうこと考えたりするんだなぁというのがたくさんありました。
初めて使う言葉を書きたいと思います!
なかなかエモかったです…。